”zero degrees”

kosuke_ikeda2007-01-14

さいたま芸術劇場へ、アクラム・カーン/シディ・ラルビ・シェルカウイ"zero degrees"を観に。


冒頭、さらに幾度かダンスの間に差し挟まれるように語られる、異なる文化を持つ国での個人的体験(パスポートを取り上げられる、列車で乗客の遺体が引きずりだされる)、二人のダンサーが身振りや吃りまで完璧にシンクロさせる語りによって紡ぎだされる物語がちりぢりに断片化されてダンスの中に現れるあたりの(身を引きずる、手をつなぐ、身を掴まれる)、語りとダンスの瞬間的交錯。ゴームリーによる人形の使い方も興味深い。前半の見せ場の東洋武術を思わせる絡みは、もっとシャープにできそうな気もしたが(それこそマトリックスみたいに)、アクラム・カーンの両手を広げてぐるぐる回転する様は非常にパワフル。シャープさ、艶っぽさ、力強さと鈍重さとが複雑に配合されており、このバランス感覚が全体としての印象を、やや弱めてしまっている可能性がなくもないかと思う。そういう意味でも、最後にもう一歩展開がみたかったかも。


ダンサーは二人だけどアイデアが盛りだくさんで退屈しないし、アイデンティティをめぐる切実なテーマにも、したたかに、そして楽しげに取り組んでいる様子が伝わり、なんだか久しぶりに若い人の良い作品を観たなあ、という気になる。翻訳とテクストの締め切りが迫る中、わざわざ行ってよかった。つーか、間に合うのかなあ。