風神雷神図

まだ行っていないのだが、出光美術館にて「風神雷神図屏風」展が開催されている。宗達風神雷神と、さらに光琳、抱一による、二つの模作が少なくとも展示されているらしく、それ以外のものがあるのかどうなのかは知らない。


ぱらとフライヤーを見て思い起こしたのは、安田靫彦の「風神雷神」(1929)。古径といい、青邨といい、三十年代の日本画壇というのは日本に限らず、美術史的に言っても、信じられないくらいの明朗さを獲得した時代だと思う。特に安田は、古径や青邨らに、時としてみられるような、あまりにも洗練されすぎた構図の組み方をしない、安直すぎるほどの朗らかな構成の中に流麗な線を遊ばせる。実際に、この作品は風神雷神という古典的モティーフを用いつつ、描かれているものを見ると、単なる二人の少年が駆け回っているようにしか感じない。どんな古典(過去完了)でも、いま、すでに獲得されている技法(現在完了)のもと、違和感なく描けてしまう。ここで、「古典」なるものは超−歴史的、しかしそれはほとんど無−歴史的とも言えるような時空間を確保するための題材となる。