MOMAにてマティス 2

kosuke_ikeda2006-05-29

「金魚とパレット」。2年くらい前の西洋美術館でのマティス展のカタログのテキストでたぶん、天野知香氏が言及していて、それによれば、もともとは金魚鉢の隣に画家の姿が描かれていたのだが、それが消去され、そのシンボルとしてのパレットとそれを持つ親指(ファロスとしての)のみが現れる、とか、そういうことが書かれていた気がする(確認のしようがないので、違うとこで読んだのかも知れないが)。この作品は、グラッタージュ(削り)の技法が印象的で、特に、金魚鉢のところでは、マティスによくみられる輪郭と色面のズレが起こり、しかも、それのズレを埋めるかのような削りが縦にガリガリと伸びる。鉢を乗せている台の左から2番目の足をみると、そこにはかつて鮮やかな色で何かが描かれてあって、それが画面を縦に貫く黒の色面により塗りつぶされているのが分かる。前者の削りの技法は画家の身体的働きかけを強調するし、塗りつぶしは行為の時間性を強調する。それらの反モダニズム的要素たちと画家の不在という要素とが奇妙に交錯する。